LIFE STYLE

Vol.16 「いちばんうれしかったこと」

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「おしごと紹介」の企画で、保育園に呼ばれています。来月の頭に伺う予定で、仕事場や、仕事中の自分、作った花束や、そのほか仕事にまつわる写真を資料としてまとめていました。

いくつかアンケートもあります。そのなかに「おしごとで、いちばんうれしかったことはなんですか?」というものがありました。
いちばんうれしかったこと……。とらわれなくても良いのかもしれないけれど、どうしても真剣に「いちばん」を選ぼうとしてしまって、いままでの仕事を走馬灯のように回想していきます。

まずはじめに思い浮かんだのは”花と出会えたことで自分の人生が方向づけされた”ことだったのですが(もちろん、うれしいこととして)、これは”おしごとで”のなかには入らないかもしれないな、と思いました。

それから、ひとりで花屋をはじめて、少しずつ仕事が増えて、アシスタントを雇うようになって、しばらくして商業施設に移転して、大好きだったハイファッションのメゾンからも花を注文していただくようになり、たくさんの方が花を買いにいらっしゃるようになり、取材も増え、出来ることも増えて社員も増えて……。ところどころ印象的な大きな仕事も思い出すのですが”いちばん”と言うには難しい。もちろん、どれも大切な仕事ですが!

花は不思議な素材です。基本的には、お客様は”いい気持ち”で注文してくださいます。ありがとうと伝えたかったり、おめでとうと伝えたかったり。もちろん、元気が出ないから自分に、とか、お悔やみの花を友人に、という注文もありますが、それもネガティブなオーダーではなくて、どちらかといえば前向きなものだと思っています。

花って漠然と”いい感じ”のするものだから、花束ひとつでも、大きい装飾でも「うわ〜、きれい」と言って喜んでくれる人がとても多い。だからいつでもいちばんうれしいような気持ちになってしまいます。ダメですね、脱線してしまいました。

いくら考えても「これだ!」という答えがないときには、元々そんなものは存在しないのかもしれないな、と思います。保育園に行く日までに、きちんとした答えが思い浮かぶといいな。

 

「人生で一番嬉しかったことはなんですか?」

いろんな人に、訊いてみたい。自分には思い浮かべられないことです。

 

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YASUTAKA OCHI

Flolist

Instagram : ochiyasutaka

1989年生まれ。表参道ヒルズでフラワーショップ「DILIGENCE PARLOUR」、東京ミッドタウンのイセタンサローネで「ISdF」営みながら、花や写真、文章を主軸に様々な表現活動を行なっている。店頭小売のほか、イベントや広告などの装飾も行う。