vol.10 「花占い2」
これを書いているのは冬至で、一年のなかで一番陽が短く(東京では日の入りが16時32分)、陰が極まって陽に転じる日とされています。これはもちろん自然現象的な意味で言われていることだと思うのですが、人の心身にも影響がありそうです。ちなみに理由は知らないのですが、ふたつ「ん」がつく食べ物を食べると良いらしいです。キンカンとか、カボチャ(ナンキン)とか。それから柚子湯に入る風習も有名です。なんでだろう。
小さな頃から、迷信というか、願掛け? おまじない? のようなものが好きでした。というか母がそういったことをいつも言っていたので、自然と身につきました。
夜に爪を切るときは「鷹の爪を切るぞ」と唱える、とか、霊柩車が通る時には親指を隠せ、とか。その他にもたくさん。もちろん、それ自体が何か物理的な効力を発揮する、とは思っていないのですが、何か“象徴“がそこにある、と思うのです。
話が飛びますが、星占いが好きで、いわゆる十二星座(太陽星座と呼ばれる、生まれた瞬間に太陽がどこに位置していたか、というもの)占いよりも、もう少し深くみたりします。黄道という太陽の通り道に12星座の部屋があって、太陽の他にも月、水星、金星、火星、木星、土星、天王星、海王星、冥王星、10個の惑星が12星座の位置に散らばっています——それぞれ、月星座、水星星座、のように、自分の星座があります。ちなみに太陽星座が象徴するものは、生き方の骨組みのようなものです。月なら感情、水星ならコミュニケーション、とか、役割や分野が“象徴”としてあります。
この連載の一つ前の回でも書いたのですが、自分の会社に「私、占いって信じてなくて」というスタッフがいて、それが「当たったことがない」ということなのか「科学的根拠がないものは信じない」ということなのかがわからなかったのですが。実はそれに対して、ちょっと意地悪なのですが「お母さんの写真が落ちていたとして、それを踏める?」と聞きました。すぐに「踏めないです!」という答えが返ってきたのですが、でも、それは物質としてはただの写真で、踏んでもお母さんが傷つくわけでもないよね、という話になりました。これも“象徴”なんだと思って、そして花屋は、その目に見えない気持ちを、花という”象徴”を使って代弁するようなものだと思っています。再掲になりますが、もちろんこれは、占いを信じろ、という話ではありません。
特に女性は、自分の身体の上では出来ている人が多いな、と思っていて、洋服を組み合わせるときに、何か作りたい雰囲気や感じとっているものがあり、具体的にするような感じ、というか……。スタイリングが上手い人がいると、いつもそんな印象を受けてしまいます。
いつも、花屋では製作の指名を受けていなくて、けれどいま、花が持つ“象徴”に興味があって、お客様から贈り先(もちろんご自身でも)のイメージを、色でも、形でも、単語でも文章でも、簡単なもので構わないので、送っていただいて、それを花に置き換えて、組み合わせてブーケを作る、ということをスタートしました。廃盤のリボンをたくさん提供して頂き、それらを使い切るまでやってみようかなと思っていて。
書き方が難しいのですが、いま、人の気持ちに触れることに興味があって。もちろん手では触れないものなのですが。花で、どういうことがやりたいかな? と思ったときに、もっと花がもつ”象徴”を読み取って、それを自分の辞書に書き写していこうと思いました。それを使って、人の気持ちを描写するような。
YASUTAKA OCHI
Flolist
1989年生まれ。表参道ヒルズでフラワーショップ「DILIGENCE PARLOUR」、東京ミッドタウンのイセタンサローネで「ISdF」営みながら、花や写真、文章を主軸に様々な表現活動を行なっている。店頭小売のほか、イベントや広告などの装飾も行う。