vol.6 「君の名は?」
コンクリートジャングルに住まう私ですが、街を歩いていて、しばしば思うことがあります。
「君の名は?」
道路脇の心ばかりの花壇、図書館の大木、住宅に絢爛と咲く花々、その他、その他。
市場に出荷されている切花に関しては充分な知識があると自負しているのですが、道行く先々に植えられた園芸種や庭木に疎い。
そんな時はこれ! 現代の叡智的アプリケーション<Picture This>。
有料なのですが、発見して即ダウンロードしました(開発者とも提供者とも一切無関係、宣伝ではないです)。
このアプリケーションは、名前の知らない花の写真を撮るとその種類や育て方まで表示してくれます。しかも高精度!
「これってカタバミだよな」
「へぇ、モンカタバミっていうんだ」
「これは?」
「ボタンクサギ」
「これは?」
「マンデビラ・サンデリ」
「へぇ、強そう」
「ゲンペイカズラ」
「強そう」
「アカンサス」
「関西弁かい?」
「シャリンバイ」
「博多っ子かい?」などなど。ここまで全て独り言です。
花だけではなくて庭木や葉物にも強い。おまけに別の機能で、弱ってしまった植物の診断までしてくれるという、植物好きには本当に嬉しいもの。一層植物と寄り添えるような、これは発明品だなぁ、と感謝。
冒頭で「切花に関しては充分な知識が」と書きましたが、本当に頓珍漢な私は、生け込み先などで花の名前を忘れてしまうこともしばしばあり、そんな時は「これは、アレです、アレ、えーっと」とわざとらしく左手の人差し指を眉間に当てながら、右手でこっそり<Picture This>。
そして思い出したふり……。機械に頼って頭の不活性を自助するばかり。
ただただアプリケーションを褒める回になってしまいましたが、とても助けられています。それに楽しい。知らないことを知る心のときめきには、なにものにも替え難い喜びがあります。
あくまでも優秀なのはアプリケーションなのに、得意顔になってしまって反省です。
YASUTAKA OCHI
Flolist
1989年生まれ。表参道ヒルズでフラワーショップ「DILIGENCE PARLOUR」、東京ミッドタウンのイセタンサローネで「ISdF」営みながら、花や写真、文章を主軸に様々な表現活動を行なっている。店頭小売のほか、イベントや広告などの装飾も行う。