vol.3 花が生まれる場所
花農家を訪れました。新潟駅に着いて、迎えにきてもらった車での移動中、吹雪いたり、突然に晴れたりと不思議な天気。
「これが新潟ですよ」と言われて笑ってしまった。自分と同じくらい不安定。
花屋で働いていても、たまに忘れてしまうのは、扱う花々がほとんどみんな土から育ったということ。もちろん頭では分かっているけれど、実感が薄れてしまいます——刺身を売っているような感じ、とまではいかないけれど。
自分ですらそうなのだから、お客様からしたらもっと感じづらいと思います。
ハウスに着くと、川の字に所狭しとチューリップが花をつけていました。
入った瞬間に感じたこと。やっぱりこうやって植物がすっくと地面から立ち上がる姿が魅力的。種から(チューリップの場合は球根だけれど)芽が出て、細胞分裂をどんどん繰り返して蕾をつけて、花が咲くなんて……。
それに、葉や蕾の造形の美しさを改めて目の当たりして、見る人を夢心地にするような植物の姿に、花屋を続けられている有り難さを感じました。この気持ちそのまま、お客様へ届けられたらいいのに。
出荷準備をしている作業場で積み上げられたチューリップ。これからそれぞれがまず市場へと出荷されます。
そこで各々花屋がピックアップして散らばっていく。同じところで育って、散り散りになってたのしまれます。妙に親近感が湧いてきて、新潟産のチューリップが市場に出ていると「お!」と思うようになる。
こうやって花の生産地やなんかを見に行って、そこで感動したことがそのまま仕事に直結しているなんて、最高すぎる。と唐突に昂揚する。
どう花が育てられ、店まで届き、お客様から、贈られる方のところへと流れていくのか。そういうことが、もう少し見えたら良いかなと思っています。今度は種や球根そのものを扱っているところへ行ってみたい。
今以上に自信を持って提供できるものを確実に増やしていきたいと、花が生まれる場所で思いました。
YASUTAKA OCHI
Flolist
1989年生まれ。表参道ヒルズでフラワーショップ「DILIGENCE PARLOUR」、東京ミッドタウンのイセタンサローネで「ISdF」営みながら、花や写真、文章を主軸に様々な表現活動を行なっている。店頭小売のほか、イベントや広告などの装飾も行う。