千年の時を経て生まれたハワイ産ラム酒 〜Kohana Rum 〜 Vol.8
オアフ島西側にある「コハナ・ラム」。のどかな田舎道の先に建つ蒸留所ではハワイ産のラムを生産している。19世紀末のハワイはサトウキビプランテーションが隆盛していたのだから、100年ぶりの復活ね、なんて気軽に思っていたわけです。私の住むマノア地区では100歳級のお爺さんお婆さんがごろごろいるものだから、1世紀がとても身近というのもある。
ですが、ツアーに参加してよくよく聞いたらプランテーション時代に作っていたサトウキビは食卓で使われる砂糖の原料となるもの。現在蒸留所のあるクニアとノースショアの畑で栽培しているサトウキビは、今から約1000年も前にカヌーでやってきたポリネシアの人々が伝えたカヌープランツ呼ばれる伝統植物で、長い間忘れ去られていたもの。そう、昔々のハワイ固有種のサトウキビを探し出し、遺伝的に証明をされた34種類の栽培を復活させたというすごいことをやってのけたのが「コハナ・ラム」の始まりなのだ。
現在世界中で作られるラムのほとんどが糖蜜(サトウキビの搾りかす)を原料にして作られるのですが、ここではサトウキビジュースを発酵、蒸留して作るアグリコール製法にこだわる。ハワイの大地の恵みがいっぱい、おいしさがぎゅっと凝縮されたラム酒。アメリカンオークや、ハワイ固有種の木コアで熟成する樽倉庫に入れば香り高き空気に、大きく深呼吸しただけで心地よく酔える。
ツアーは要予約ですが、試飲だけならお気軽に。サステイナブルな暮らしが注目される今、ハワイに古くから伝わる植物への関心は高く、歴史を紐解き見直されている。ここでは、一度熟成に使用した樽に、コーヒー豆やはちみつ、カカオなどを入れて熟成し、二次利用をしているのですが、この副産物がまた格別においしい。ラムフレーバーのコーヒー、チョコレート、はちみつなどは友人たちのお土産にしてとても喜ばれている。
そして、もうこれ以上は使用できませんとなった樽は小さく切って、BBQ用の木材チップとして利用。カルアポークやスモークミートを燻す材料となっている。屋外のイートインコーナーで食べられるハワイアンBBQ、これがピクニック感覚でとてもいい。本当によく考えられているなあ。そして、ここで作られるすべてのもののおいしさに毎回感動する。
MAYA KUDO
メディアコーディネーター
大分県出身、ホノルル在住約20年。雑誌、テレビなどのメディアコーディネーター、ライター。虹の谷マノアに暮らす。どんな世代にもフィットするハワイを発信、歴史やカルチャーなど古き良きハワイをベースに最新ハワイを網羅する知識でメディアからの信頼も厚い。著書のほか、ハワイの風を感じるインスタグラム、連載も多数。CREA「おもてなしハワイ」、JAL機内誌Eheu、ハワイ州観光局運営のAll Hawaiiなど。趣味は日の出前から出かけるフリーダイビングと海上がりのがっつりプレートランチ。