FASHION

地球を身につけるダイナミズムを知る

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無事、最終回を迎えることとなりました。
読んでいただいている皆様には、感謝申し上げたい限りです。

決して安くはないですが、生まれたストーリーや、注がれた職人技や作り手の思い、そして、着こなしに奥行きを与えてくれる楽しさ……などなど。普段抱いている腕時計への思いがいくばくか伝わっていたなら幸甚です。

今回紹介したいのは、モンブランの腕時計「モンブラン 1858 ジオスフェール」。この魅力について、どこから触れようか。悩ましい限りの一本。
生涯で2本目となる高級機械式時計なので、本来は吟味に吟味を重ねたかったところでしたが、この時計は、一目惚れ。デザインにやられてしまいました。

どーん。若干ピンが甘い点はご容赦を。

12時位置には北極点上空から眺めた北半球儀、6時位置には南極点上空から眺めた南半球儀が配置されているダイヤル。このスケール感の大きさ、これまでの腕時計では、否、ほかのどんな計器でも見たことがない意匠に度肝を抜かれました。論それだけではなく、シンメトリーに配置された偶数のインデックス。妙な輝きをもつ四方位を記したベゼルとのバランスなども含めて、この時計にそこはかとない美を感じたわけです。

それに私は、何より黒文字盤+ベージュインデックスが大好物。もともとは、ヴィンテージ時計を現代的に真似た配色ですが、結果、この組み合わせはなんとも言えないグッドバランスに(あれ? 以前ご紹介したベル&ロスもこの配色!同じ時計じゃないんですよ)。

 

当時の価格にして70万円弱(現在は、円安・諸経費高騰による値上げ済み)でしたから、かなりの“清水買い”だったことは言うまでもないでしょう。
それでも、私の背中を押したのは、腕時計が持つ背景・ストーリーにほかなりません。

背中押しストーリー その1=ミネルバのスピリット

初手からかなりマニアックなお話になります。

ヴィンテージ時計界では非常に玄人好みされる「ミネルバ」というブランドがあります。数々の計器や名作時計をリリースしてきた歴史ある時計工房なのですが、モンブランが傘下に収めて、今も精密な時計作りを続けているんです。この「モンブラン 1858」コレクションは、そんなミネルバの誕生160年を祝したものでもあり、随所に歴史的なスピリットが宿されている点も通好みだったりします。

製造のすべてを手がけているのではなく、機械の一部、南北半球儀を動かすモジュールが、このミネルバの手によっている。それだけでも連綿と続くスイスウォッチメイキングの歴史の一旦に触れられる。そんな喜びを感じております。
筆記具で有名なモンブランですが、腕時計製造においても評価が高いのは、こうした本物志向も手伝っているんですね。

背中押しストーリー その2=冒険的な時計

南北半球儀をよく見ると、その地図上に赤い点があり、それが、7つの各大陸最高峰の位置を示しています。
山岳への思いを馳せたコレクションに、特に登山が趣味というわけではない私も、大いなるロマンを感じてしまいました。

ベゼルに刻まれた四方位を使えば、冒険時にアナログな方向指示器の役割も演じられます。時計を水平に保ち、現在時刻の時針を太陽に向けます。12時と太陽の中間地点が南にあたります。Sマークのベゼルをその位置に移動させれば、太陽と時計で南がわかるのです。
こんな実用面も、冒険はしない私に、少しの勇気を与えてくれます。いつ冒険しても大丈夫だと。

背中押しストーリー その3=世界を感じるロマン

ダイヤルの南北半球儀は、ただの飾りやギミックではありません。地球同様に24時間で1回転し、0から24の数字を刻んだ24時間計リングによって、知りたい地域の時刻を大づかみで知らせてくれる、いわばワールドタイマーウォッチ。
世界を感じていられる旅時計としての一面もありまして、コロナ禍で、旅行がままならない時期も、ここは何時かな。などと妄想にふけることもできました。さらに、所有してみて感じたのは、サマータイムには対応していないものの、海外のおおまかな時刻がわかるのは、案外使えるということ。
海外出張中の仕事相手とのやりとりで、「向こうは何時かな?」に、おおまかに対応でき流点がかなり有用でした(精度が必要な場合は、ネットで調べますが)。愛ゆえに長くなりましたが、上記のようなストーリーが、私を震わせ、結果、購入に至らせるわけです。


さて、そんな冒険心あふれる時計ですが、ベージュの面積が多いという特徴も踏まえつつ、黒とペールトーンをリフレイン。黒Gジャンとレモンイエローのインナーに合わせた、ライトインディゴのデニムでヌケをつくりました。

(シュタンバウムのGジャン/ロン ハーマンのスウェットTシャツ/レッドカードのデニム)

ベージュを拾って、ネイビー×ベージュのミニマルな配色も面白いでしょう。スウィングトップとデニムで、トラッドにまとめています。

(ユナイテッドアスレのブルゾン/マディソンブルーのシャツ/レッドカードのデニム)


夏を意識して、ベージュを拾ったコーデュロイショーツにストライプシャツをオン。もはやデニムはありませんが、こんなテイストにもマッチします。

(グリーンレーベル リラクシングのシャツ/キャプテンサンシャインのショーツ)


おっと、このコーデには、こんなふうに差し色時計もマッチするんですよ!

(トリワ×セルジオ タッキーニの腕時計/ファミリーマートのソックス)

などと好き勝手にやらせていただきましたが、いかがでしょうか。
腕時計に込められたさまざまな思いが、一手に感じられるのが、ここに紹介したモンブランの時計でもあります。

半年もの間、ご愛読ありがとうございました!
また、どこかでお会いしましょう。そのときは時計談義でも。。。

 

 

  • 今月の時計

モンブラン

モンブラン 1858 ジオスフェール

MB117837

 

SSケース、径43㎜、自動巻き。

現在、日本入荷は未定。

海外参考価格 €5.700,00

 

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MASASHI TAKAMURA

エディター/ライター

instagram:masacisco

男性向けライフスタイル誌の編集を経て、現在はフリーランスとして活動。2013年に初のスイス取材を経験して以来、腕時計の世界にどっぷり。時計とファッションの相性を探求する40代。デニムカジュアルのほか、ゴルフ、音楽、スポーツ、食など、取材範囲の節操のなさは業界随一? いずれはK-POP、麻雀、サッカー界への進出をも目論む。