菜の花
毎朝起きるのがつらい、夜寝る時も湯たんぽがないと寝付けないほど厳しい寒さが続く今日この頃。いくら寒い日は続いても、買い物に出かけたスーパーには春の野菜がちらほら並び始めています。中でも黄色い可憐な花をつけた菜の花は見るだけで春気分を先取りできるのがうれしい春野菜。
これだけたくさんの野菜がある中で花自体を食べるのはこの菜の花くらいなのが不思議ですが、可愛らしいルックスと爽やかなほろ苦さが春の到来を感じさせてくれます。買ってきた菜の花はキュッと束ねられていてなんだかちょっと窮屈そう。
まずはたっぷりの水を張ったボウルに浸して水分を吸わせてあげる。そう、生花を水揚げするのと同じ要領です。すると葉先までピンとしてイキイキと生き返ります。淡い黄色とグリーンは見とれてしまうほどの可愛らしさで、眺めているだけでキッチンがパッと明るくなります。しばらく愛でてから、旬を感じながらいただけば二度美味しい。
菜の花というとまずはお浸しや辛子和え。青々とした色味を残してシャキッと仕上げたいのですが、茹で時間が意外に難しい。ちょっと油断しているとクタッとしてしまう。短いものならそのままでも大丈夫ですが、長いものや茎の部分が太いものは蕾の部分と茎の部分が分かれるようにふたつに切ります。
普通の太さのものなら塩を加えた熱湯で、茎は1分ほど、蕾は30秒ほど時間差で加えて茹でて、冷水に取ります。その後蕾を潰さないように優しく水気を絞れば下ごしらえが完了。濃いめのお出汁に浸したり、辛子とだし醤油に酢を少々垂らした調味料で合えればOKです。それ以外にちらし寿司に散らすのも春らしい。
和風のイメージが強い菜の花ですが、洋風やエスニックにも意外に馴染みます。お浸し感覚で食べられるのがナムル。自己流なのですが、茹でた菜の花をごま油とちょっぴりのおろしニンニク、塩、隠し味の砂糖であえて香りのよい胡麻をたっぷりとふります。すり胡麻でも炒り胡麻でもお好みで。菜の花のほろ苦さが美味しい春の副菜になります。
おつまみでおすすめなのは、同じ春の素材、ホタルイカと合わせたペペロンチーノ。ニンニク、赤唐辛子、オリーブオイルと菜の花を蒸し炒めにして最後にホタルイカを加えてふっくらするまで炒めれば完成。隠し味にアンチョビを少し加えても味わい深く仕上がります。ワインやビールはもちろん、日本酒にも合うちょっとオツな味わいのおつまみになります。
パスタとも相性抜群。定番のボンゴレに加えるだけで、一気に春仕様の一品に。あさりをニンニクとオリーブオイルで炒め煮にしたところに生のままの菜の花を加えてひと煮立ちしたところに茹で上げたパスタを加えて絡めると色味も歯応えもよい。貝も菜の花も春が旬なので相性がいいのは間違いありません。
最近気に入っているのは菜の花のフライパングリル。茹でてばかりだった菜の花ですが、レストランで食べたちょっと焦げ目のついたところが香ばしくてびっくりするほど美味しかったので、家でも真似して作るように。これが付け合わせに、お弁当にと大活躍。同じように直炒めすると美味しいかぶと組み合わせれば立派な一品として食卓を飾ってくれます。
上手に作るコツは、菜の花にたっぷりと水分を含ませておいて、そのままフライパンで炒めること。菜の花自体が持っている水分で塩梅よく焼きあがるという寸法です。オリーブオイルでしっかり焦げ目がつくまで炒めて塩胡椒とバルサミコをひと振り。バルサミコのちょっぴり甘みのある酸っぱさが旨味に変わって味わい深く仕上がります。好みでアンチョビやニンニクを加えても。出来立ての熱々はもちろんですが、冷めても美味しいので作り置きにしておいても重宝します。
菜の花とカブのフライパングリル
<材料>
菜の花 1束
かぶ 2個
オリーブオイル 大さじ2
バルサミコ 小さじ2
塩 少々
胡椒 少々
<作り方>
1.菜の花は水に浸してパリッとさせ、細いものはそのまま、太いものは縦半分に切る。カブは茎を少し残して切り落とし、根の先を切り、皮のまま4当分のくし切りにする。
2.フライパンにオリーブオイル大さじ1を入れて、まずカブを入れて香ばしい焼き色がつくまで転がしながら焼き、塩胡椒して一度取り出す。
3.フライパンをさっと拭いて、オリーブオイル大さじ1と菜の花を加えて火をつけ、あまり触らないようにして両面に香ばしい焼き色がつくまで焼く。塩胡椒し、仕上げにバルサミコをふってからめる。
ariko
エディター / ライター
「CLASSY.」「VERY」などファッション誌の表紙などを担当するエディター、ライター。インスタグラムに投稿するセンスあふれる料理写真や食いしん坊記録で話題に。Instagramのフォロワーは20万人越え。著書に「arikoの食卓」シリーズ(ワニブックス)、「arikoのパン」(主婦の友社)「ありこんだて」(光文社)「おいしいルーティン」(講談社)「arikoの家和食」(講談社)に続いて、7月7日にはお菓子の本「arikoの喫茶室」がマガジンハウスから発売中。