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趣深いデニム加工の魅力を生み出すのは、結局のところ、素敵な「ヒト」でした

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手の込んだデニム加工の全貌をお伝えした岡山のデニム加工工場「豊和」さん。今回は、そこで働く「人」やサステナブルな取り組みについて、さらに深く掘り下げていきます!

「豊和」ってこんなところ
その1:業界をリードする加工技術!

やはり、前回もお伝えしたとおり、注目のストーンウォッシュ加工技術を確立したその先見性。そして、今なお進化をやめない姿勢によって、レーザーやロボットシェービングなど、先端的な加工技術も積極的に取り入れています。一方で、職人の育成にも余念がなく、ゲストリストなどの小規模ながらもこだわりのデニム加工にも対応してくれています! すごい。

「豊和」ってこんなところ
その2:深い歴史がある!

倉敷に設立された紡績所などを筆頭に、繊維産業が盛んな、岡山県・倉敷市。綿花栽培も行われていたという児島エリアを中心に、綿布帛の生産が地場の産業として育っていったというわけですね。それには、日本が誇るジーンズ産業・文化の発展が不可欠。

「児島ジーンズストリート」などもあって、街ぐるみでその発展に貢献しているのです。なかでも1965年に誕生した、この「豊和」の存在は、のちのジーンズ界に大きく貢献。特筆すべきは、1978年にストーンウォッシュ技術を確立した点でしょう。その後も、青ジーンズを黒く染める、スーパーブラック加工法やケミカルウォッシュなども開発。

現在のサステナビリティにつながる、エコブリーチ法や無水染色法なども取り入れながら、排水にも気遣った加工を発展させているわけです。

「豊和」ってこんなところ
その3:持続可能なジーンズ生産を!

現在、世界全体で注目されるSDG’s(持続可能な開発目標)については、当然デニム業界も無視できないトピックス。
歴史の点でも触れたように、「豊和」では、この点にもいち早くフォーカスを当てているんです。やはり「洗い」が加工のなかで、重要な位置を占めるわけですから、排水への配慮は非常に大切。水の使用量削減を目指した手法を取り入れて、業界をリードしているんですって。

また、「洗い」や「染色」で使用した化学物質、繊維屑、ストーンウォッシュで使用した石などからなる汚泥。これらを水と分離させ、外部業者の手で堆肥にまで作り替えられるそうなんです。デニム加工から堆肥なんて、すごいですね!

また、25年前から本社では太陽光発電を行うなど、エネルギー循環にも気遣っています。
こうしたさまざまな手法で、ジーンズの未来を明るく照らす。「豊和」さんの仕事ぶりには頭が下がります!

働いているのはこんな人たち!:特別インタビュー!


■尾崎 達也さん 所属:本社営業開発課 係長


――デニムの加工に携わる職人、尾崎さん。こだわりや信念を教えてください。

 お客さまからの依頼を受けた内容に、どう応えていくか。ここにフォーカスしています。依頼主であるブランドのカラーやテイストを意識しながら、素材にフィットしたヒゲや擦りといった加工をセレクトしていきます。

そのなかで、自分の得意とする加工をいかに表現していくか、依頼内容と自分の表現方法をうまくバランスをとって、納得していただける仕上がりにするか。ここがこだわりになります。

――当社からは、レッドカードトーキョーとアッパーハイツの2ブランドを依頼しています。ブランドによって表現を変えるとのことですが、具体的な手法の違いがあれば、教えてください。

レッドカードトーキョーさんのほうが、リアルなヴィンテージ感をより追求したイメージです。立体感を強調しています。

一方、アッパーハイツさんのほうが、きれい見えさせるイメージです。特にハイライトなどに注意して、膝位置の高さを設定するなど、わかりやすい「きれいめ」を意識しています。両方とも、はいたときに美しく見えるように、という点は共通しています。


――ジーンズの「顔」を作るのは、大変なのですね。

きれいに見せるためには、加工の強弱だけではなく、コントラストやニュアンス、グラデーションを意識するなど、複雑な工程を経ています。こうした小さな作業の積み重ねが、いい「顔」を作るのには欠かせません。

――ありがとうございました!


■丁田 風太 所属:本社営業開発課

 

――今年、豊和に入社したばかりという丁田さん。そのきっかけはなんでしょう?

ファッションが好きでしたので、地元でジーンズ業界で活躍する企業があると知り、誇りに感じて入社しました。入社して、より深くジーンズのことを知ることができました。

――得意な業務はなんでしょうか?

“ジアぶき”という、生デニムにジア(次亜塩素酸)を塗るブリーチ工程です。加工の程度は、目に見えないので、非常に難しいですが、これが身についたのはうれしいですね。

――将来、豊和で成し遂げたいことはありますか_

今の仕事をまずはきちんとできるように会社に貢献したいですね。

今はまだ、どの作業をどの程度おこなったら、どのような顔になるのか。この仕組みをまだ完璧には理解できていないので、その基礎知識をつけた上で、自分らしい「顔」を作っていきたいです。

将来的には、自分のような若い人間が好むような、自分が格好いいと思うデニムを加工できたらと思っています。ブランドを立ち上げるなどは、まだ現実味がありませんが、可能性があるならば、そういったことにも挑戦してみたいです。

 

――ありがとうございました!

ジーンズ加工の歴史を牽引してきた「豊和」さん。SDG‘sへの貢献だけでなく、働いている職人さんたちもイキイキとされていた印象でした。
デニム界の発展について、私たちゲストリストも、豊和さんと一緒に貢献していけたらと思った、そんな工場訪問となりました!!

今回取材したのはこちら:豊和

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MASASHI TAKAMURA

エディター/ライター

instagram:masacisco

男性向けライフスタイル誌の編集を経て、現在はフリーランスとして活動。2013年に初のスイス取材を経験して以来、腕時計の世界にどっぷり。時計とファッションの相性を探求する40代。デニムカジュアルのほか、ゴルフ、音楽、スポーツ、食など、取材範囲の節操のなさは業界随一? いずれはK-POP、麻雀、サッカー界への進出をも目論む。