FASHION

デニムの「顔」を生み出す、児島の技術に注目!

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みなさん、デニムは何を基準に選びますか? シルエット? フィット感? 面構え?

もちろん好みはさまざまあると思いますが、ゲストリストが携わるデニムの、数ある魅力のうちでも、ユーザーから大きな支持をいただいているひとつとして、「リアルな加工技術」をよく挙げていただいています(ありがとうございます!byゲストリスト)。
そこで、一体全体、どのように仕上げているのか。大人の工場見学を実施。アッパーハイツとレッドカードトーキョーを担当していただいているデニム加工工場「豊和」さんに潜入! デニム加工の全貌を見ていきたいと思います!

デニムの街、児島

訪れたのは、デニムの街としてお馴染みの岡山県倉敷市児島で、1965年から続いているデニム加工工場の豊和さんです。
日本で初めてストーンウォッシュの加工技術を確立したというから、日本のデニム史に名を刻む存在といっていいでしょう。

倉敷市街地から瀬戸内をのぞみながら豊和本社工場へと向かう道すがら。美しい景観です。
閑話休題。江戸から明治の干拓事業で埋め立てられた児島の町は、綿花の栽培が発達したことで紡績工場も多く立ちました。それゆえに、今、デニムの街として発展しているというわけです。

児島の町には、児島ジーンズストリートなるものもあって、街全体でデニムを盛り上げています。面白いですね!
脱線しましたね、戻ります!
さて、豊和さんには今回訪れた本社工場以外にも、大手メーカーの加工を請け負う大規模な工場も所有。デニムのリアルな加工においては、まさに第一人者なのです。当日は、豊和の研修があるということで、その加工実習に潜入することができました。早速、どれだけリアルな加工がなされているのかを見ていきましょう!

面構えが決まるシェービングは一本ずつ手作業で

早速、工場内に。おおまかな工程の説明を受けて、いざ工場内へ!
第1工程に突入。
ヴィンテージライクな表情作りに欠かせないのが、腿のヒゲ、膝裏のハチノスと呼ばれる着用感を表現する加工です。このシェービングという工程によって、デザインされたヒゲやアタリをつけていきます。ヒゲ台と呼ばれる作業台をセット。凹凸が刻まれたこの台の上で、デニムの筒を表側左右、裏側左右の合計4面、そして、フロントやヒップなどの細かな部分を加工。

やすりや電動ブラシを、強弱に応じて使い分け。仕上がりをイメージしながら、細かく位置を調整して、こすりあげていきます。指導にあたる職人さんは、コインポケットやピスポケットなどの小さな部分も、手慣れた様子で電動ブラシをかけていきます。

年季の入ったヒゲ台ですね。このようにリアルなあらかじめシワがデザインされています。ブランドによって仕上がりのイメージが異なるために、シェービングを入れる箇所や強度などは変わってくるのだそう。ちなみに、ゲストリストのデニムは、結構細かく工程が入るとのこと。ありがとうございます!

実習生もトライしますが、簡単ではなさそう。ちょっとした違いを出すのにも職人の経験や勘がものを言いますね。

“ジアぶき”と呼ばれるブリーチ工程に

シェービングのあと、「ジアぶき」と呼ばれるブリーチの工程に。
“ジア”とは、次亜塩素酸のことで、いわゆるブリーチ剤です。濃度を調整したこの成分を浸した布を使って拭いていくから、“ジアぶき”というわけです。加工の工程で、トータル2回の“ジアぶき”を行います。そのうち1回目は、先ジアぶきと呼びます。

こちらも手作業。

布の乾きなども考慮しながら、強くブリーチする箇所と、弱めでいい箇所。シェービングされた箇所を確認しながら、デニム表面を擦るように、軽く拭き上げていきます。強めに色が抜けてもいい箇所から初めて、弱めの箇所は最後のほうに。素早く丁寧に仕上げていく職人技ですね。
難しいのは、色落ちの効果がすぐには目に見えないこと。今、どれくらいの分量を塗ったのかは、やはり職人の経験によるところが大きいといいます。
色を残さなければいけないのに、落とし過ぎてしまう失敗は許されないのです。すごい!

こだわりの「ピンうち」とは?

“先ジアぶき”まで終えたデニムを洗いにかける前に施す「仕込み」といえるのが、このピン打ちです。

より、立体的な色落ち、アタリ感を出すために、ピンで摘むことで、洗濯によって色が落ちやすい場所と落ちにくい場所をつくる作業。

くしゃっと、つまみます。(あ、ジアぶきの反応が進んで、立体的な色落ちが浮いてきましたね)。この一手間が大事な上に、やはりこの工程のぶんだけ、コストもかかるのです。

あの、ストーンウォッシュがこちら!

はい、こちら! ストーンウォッシュです。本当に石と洗うんですよ。って、知ってますよね。それくらい。失礼しました。しかし、なかなかお目にかかれない光景ではないでしょうか。シェービング→先ジアぶき→ピン打ちの過程を経たデニムは、ストーンウォッシュの工程に進みます。

ストーンウォッシュデニムの先駆けである豊和さんですから、この技術はもう折り紙付き。ゲストリスト以外にも多くのデニムブランドが、この恩恵に預かっています。

一度、次の加工に向けて、また乾燥させていきます。しっかりと縮んで、のちの加工もしやすくなるというわけです。

洗ったあとにもう一度、“中間ジアぶき”!

ウォッシュのあとに入れる「中間ジアぶき」をご紹介します。

ある程度加工が進んだデニムに、もう一度、次亜塩素酸(ブリーチ剤)を塗布します。ジアの「おかわり」ですね。この工程を2回実施するというのが、我がゲストリストのデニムの「こだわり」でございます!より強く色落ちさせたい場所に対して、ジアを塗りこむわけですから、よりリアルな色落ちが実現できるというわけなんです。

はい。細かな箇所も逃しませんよ!

これが噂の「ダメージ加工」!

「中間ジアぶき」を終えたデニムは、全体的に洗濯機にかけられます。全体の色合いがなじんで、いわゆる我々の知るウォッシュドデニムの顔立ちとなってくるわけですね。

でも、まだ終わりではありません。むしろ、ここからが本番!?
ま、それは言い過ぎですが、ヴィンテージ顔のデニムに欠かせない、ダメージ加工が待っています。ここまででも、大方のダメージが生まれているのですが、最後の色つけ。ここまででは画竜点睛を欠く、とは言い過ぎですが、最後に龍の目玉を入れて、仕上げていくわけですね。

「追いダメージ」ですね。このようにバフをかけて、ほつれさせていきます。仕上がりイメージに近づける。ポケットのステッチ部分やサイドのシームなど、細かくチェックして加工していきます。

 

infomation:後編は12月にUP予定

 

 

 

 

 

 

 

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MASASHI TAKAMURA

エディター/ライター

instagram:masacisco

男性向けライフスタイル誌の編集を経て、現在はフリーランスとして活動。2013年に初のスイス取材を経験して以来、腕時計の世界にどっぷり。時計とファッションの相性を探求する40代。デニムカジュアルのほか、ゴルフ、音楽、スポーツ、食など、取材範囲の節操のなさは業界随一? いずれはK-POP、麻雀、サッカー界への進出をも目論む。