LIFE STYLE - TRAVEL

vol.2 Gold Bar at EDITION(東京エディション虎ノ門)

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国内外のホテルに精通したトラベルエディター、伊澤慶一の新連載「日常にもっとホテルを」。
レストラン、ラウンジ、バーなど、ビジターでも存分に非日常を感じられる、賢いホテルの使い方をご紹介します。第二回目は、スピークイージーな雰囲気漂う、東京エディション虎ノ門のGold Bar at EDITIONへ。
都心で日夜働くオフィスワーカーであれば、仕事終わりの自分をねぎらうため、行きつけといえるバーのひとつやふたつは持っておきたい。今日紹介するのは、

虎ノ門にあるホテル「東京エディション虎ノ門」のバー。といっても、緑が生い茂る31階のロビーラウンジのバーカウンターではない。ホテルの1階、エレベーターに通じるメインエントランスの右側、看板のない黒い扉の先に「Gold Bar at EDITION」の入り口は潜んでいる。

「東京エディション虎ノ門」が開業したのは2020年10月。数々のブティックホテルを手掛けてきた伝説のホテリエ、イアン・シュレーガーと建築家の隈研吾がタッグを組んだホテルとして大いに話題になったが、こちらのバーはコロナ禍の影響で開店が遅れ、1年半後の2022年4月末に待望のオープンとなった。隠れ家のような佇まいは、アメリカで禁酒法が施行されていた頃のスピークイージー(密造酒を販売していたバー)を彷彿とさせる。バーを選ぶ際の基準として、「扉を開けた瞬間にどれだけ高揚感を得られるか」というのを個人的にとても重要視しているのだが、その点ここGold Bar at EDITIONはパーフェクト。

「こんなところにバーが?」と少し不安な気持ちにさせたところで、扉の奥から黄金色に輝く空間が目に飛び込んでくる。もし初めての同行者がいたとしたら、男女問わず漏れなく感嘆の声をあげるだろう。日常からのエスケープ先として、またサプライズの演出として、これほどふさわしい場所はない。
もちろん予約は入れておいたほうがスマートだ。

壁から床までは、日本の「焼杉」をモチーフにしたという漆黒の世界。そこに壁掛けのアートやクッションの刺繍、スカルプチャなど、要所にゴールドを散りばめることで大人の社交場のような煌びやかさを演出している。頭上はヨーロッパの教会を連想させるバレルヴォルト天井を採用、圧迫感はまったく感じない。もちろん提供されるカクテルやフードも雰囲気に一切引けを取らないクオリティで、「カクテルの黄金時代」と呼ばれていた頃のクラッシックカクテルをインスピレーションにしながら、日本の素材を活かした独創的なデザインのシグネチャーカクテルが15種類もあるほか、幅広いセレクションのクラフトジンやウィスキーなど、酒好きを唸らせるメニューが用意されている。

ちなみにフードメニューは季節ごとにお店が変わっていくキュレーションスタイル。オープニングを飾るのは、渋谷にある人気九州居酒屋「なるきよ」だ。店主のなるきよ氏がこのGold Bar at EDITIONのために考案したオリジナルの和食は、先ほど紹介した和のカクテルとも相性抜群。

なるきよ御用達の鹿児島県産のもろみ味噌とエディション自家製ヴィーガンマヨネーズを添えた季節野菜のスティック、いくらとトリュフが盛り付けられたタスマニア産最高級サーモンの串焼きなど、「バーのおつまみ」と呼ぶにはどれも非常に手が込んでおり、いい意味で期待を裏切ってくれる。

黒のレザーソファーに深く腰掛けながら空間全体を楽しんで飲むのも素敵だが、私がお気に入りのスペースはやはりバーカウンター。壁一面のボトルシェルフにイアン・シュレーガー自らがセレクトしたというアンティークのクリスタルデキャンタやオブジェ、それらを間近で眺めながら、特等席でミクソロジストの手捌きに酔いたい。柔らかい間接照明を浴びているうちに仕事の疲れは自然とほぐされ、オンからオフへスイッチが切り替わっていくのを実感できるだろう。

ライターや編集者であれば、誰しも「本当は教えたくない店」というのをもっているものだが、私にとってまさにここがそんなバー。連載で紹介してしまうのはなんとも惜しい気もするが、ぜひ友人や恋人を連れて、もしくは仕事終わりにぶらりとひとりででも、足を運んでみてほしい。もしあなたの知人が自信たっぷりにこのバーにエスコートしてくれたとしたら・・・、そこはぜひ知らなかったふりを演じて驚いてあげるのが優しさというものだろう(笑)。

今回紹介したホテルはこちら!
東京エディション虎ノ門

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KEIICHI IZAWA

トラベルエディター

instagram : izawakeiichi

旅行ガイドブック『地球の歩き方』編集部にて国内外のガイドブックを多数手がけ、2017年に独立。現在は、雑誌のホテル特集ページ制作を手がけたり、「ワーケーション」や「ステイケーション」をテーマに連載記事の執筆、また自らのInstagramアカウントで日々おすすめホテル情報を発信している。