番外編 お出汁
今月はいつものキッチングッズではないですが、やはり我が家のキッチンに欠かせないだしパックのお話を。ひょんなことから始まっただしパック作りのエピソードをさせてください。
お鍋にぽんと入れるだけで美味しいお出汁ができるだしパックは忙しい毎日にはありがたい存在。我が家でも色々なだしパックを試してみていましたが、旨味が足りなかったり、逆に塩分が強すぎたりと満足いくものになかなか出会えずにいました。
仲の良い友人との雑談で、いりこだしがあるんだから、ありこだしがあっても面白いんじゃないという笑い話をするうちに、自分好みのだしパックを作ってみたいという欲望がムクムクと湧き上がり・・・。
そこから委託でお願いできる自家製の鰹節を使ってだしを作っている工場探しが始まりました。友人知人のツテを探して出会ったのが、今回お願いすることができた焼津の業者さんでした。明治年間創業の老舗の鰹節問屋で素材にこだわり、無添加にこだわり、手間暇を惜しまず、昔ながらの作り方を実践されているのを実際に焼津に足を運んで工場見学させていただき、目の当たりにしたのが決め手でした。
ここで作ってもらえたら絶対に美味しいものができると確信して、なんとか頼み込んで引き受けてもらうことに成功。熱い想いを聞き入れてもらい、いよいよ実際のだしパック作りが始まりました。焼津港で水揚げされた鰹を燻製した後にカビを付けて天日干しを繰り返して徐々に水分を抜きながら熟成させた「本枯れ節」をベースにすることに決定。
本枯れ節の特徴は風味豊かで透明感のあるだし汁が取れ、魚臭みがないのが特徴。そのままでも食べても美味しいものを出汁パックにするので美味しくないわけがありません。ちょっと贅沢ですが一度食べてしまうとその美味しさには妥協できず・・・。そこに旨味が強い九州産の焼きあご、香りの高い伊豆産の椎茸を納得のいくまで何度も配合を変えて試作を繰り返してついに完成することができました。
パッケージも自分好みにデザインしていただき手元に受け取った時には感無量。まるで我が子のように愛情を感じて、だし活を楽しむ毎日に。まずマグカップにひとつ入れて熱湯を注ぐ濃いだしがとにかくお気に入り。あっさりとしていて旨味もたっぷり、じんわり染み入るお出汁はおにぎりやお弁当と一緒に楽しむのがピッタリ。焼塩の塩梅もちょうどよくもはやお吸い物を作らなくてもいいんじゃないかと思うほどです。
もちろん毎日のお味噌汁や煮物のベースにするのはもちろん、袋を破いて中身を料理に使うのもおすすめ。ふんわりとした粉末に仕上げてあるので口に残らず何にでも旨味を加えられるところもこだわりのポイントでした。
友人に教えてもらった卵かけご飯に醤油代わりにする食べ方も目から鱗でした。他にも釜玉うどんにかけたり、こんにゃくの炒り煮に絡めたり、野菜やチャーハン、焼きそばなどの旨味出しに気軽に味塩感覚で使っていただけたら。
最後にお気に入りの食べ方をひとつ。ファスティング明けに食べることで知られる大根の梅干し煮「梅流し」を。昆布だしだけで作られることが多いレシピを旨味の強いおだしでさらに美味しく食べやすくなります。皮を剥いて適当に切った大根を梅干しと一緒に出汁と煮るだけ。この作り方にすると不思議と大根の煮物独特の匂いがなくとてもすっきりとしていて食べやすい。繊維質たっぷりでお腹のお掃除にもなるので食べすぎた時の調整食にもピッタリ。冷蔵庫に汁ごと常備しておくと小腹が空いた時にサクッと食べられてとても重宝します。
ありこだしの梅流し
<材料>(作りやすい量)
大根 1/2本
ありこだし 2パック
水 5カップ
梅干し(塩分の高いもの14%以上)2〜3個
<作り方>
1.大根は2センチ幅にスライスして皮を剥き、半月に切る。
2.鍋に湯を沸かし、ありこだしを2パック入れてだしを取り、大根を入れて10分煮る。
3.大根に火が通ったら梅干しを加えてさらに5〜6分煮る。出来上がったら汁ごといただく。
冷蔵庫で4〜5日保存可能。梅干しは蜂蜜入りなどではなく、昔ながらのしょっぱくて酸っぱいものを使ってください。
商品情報
ARIKOYA
ariko
エディター / ライター
「CLASSY.」「VERY」などファッション誌の表紙などを担当するエディター、ライター。インスタグラムに投稿するセンスあふれる料理写真や食いしん坊記録で話題に。Instagramのフォロワーは20万人越え。著書に「arikoの食卓」シリーズ(ワニブックス)、「arikoのパン」(主婦の友社)「ありこんだて」(光文社)「おいしいルーティン」(講談社)「arikoの家和食」(講談社)に続いて、7月7日にはお菓子の本「arikoの喫茶室」がマガジンハウスから発売中。