Vol.1 the SUSHI(アンダーズ 東京)
国内外のホテルに精通したトラベルエディター、伊澤慶一の新連載「日常にもっとホテルを」。レストラン、ラウンジ、バーなど、ビジターでも存分に非日常を感じられる、賢いホテルの使い方をご紹介します。第一回目は、ちょっと特別な日のディナーのために知っておきたい、アンダーズ 東京のthe SUSHIへ。
虎ノ門ヒルズ 森タワーの上層階に位置する、アンダーズ 東京。日本初上陸から8年が経ち、今ではホテルラバーのみならず広く知られるようになったラグジュアリー ライフスタイルホテルですが、ホテル内に寿司屋があることは実はあまり知られていないかもしれません。お店があるのは、レセプションロビーからさらにエレベーターで上がった最上階の52階。控えめな看板で、知らなければ見落としてしまいそうな扉の奥に、わずか8席のカウンターが待ち構えています。
実はここ、開業時は茶室をイメージした焼酎バーとしてオープンしていました。それからしばらくして、「ホテル内でも和食を食べたい」という海外ゲストの要望に応えるかたちで、寿司屋としてリニューアルオープン。そのため、初期にアンダーズ東京に遊びに来ていた人でも、「あれ?寿司屋なんてあったっけ?」と知らないでいるケースもあるようです。
寿司を握るのは、日本で豊かな経験と研鑽を積み、広州のWホテルや深センのJWマリオットで日本料理の総料理長を務めていた中村栄治さん。旬の小鉢3種、刺身3点、握り寿司10貫、巻物、デザートなどのお任せコース「虹の月(税込・サ別17,600円)」がおすすめとのことですが、お好みでオーダーも可能(メニューもあり明朗会計)です。中村さんは日中英の3カ国語を操れるので、海外からのお客様のおもてなしにもぴったり。
「ジャズのように、その場でアレンジさせていただきます」という中村さんの言葉どおり、ネタの好みやお腹の空き具合を伝えると、コース料理の中でもリクエストに応じた握りを提供してくれます。例えば脂っこいものを受け付けない日には、炙りで焼き魚にしてくれることも。8席しかない分、サービスも細やかで、会話のキャッチボールが弾むのもこの店が好きな理由。苦手な食材は伝えておくことで、次回以降スマートに避けて対応してくださいます。
この日はスミイカやキンメダイ、中トロ、ノドグロ、ウニ・イクラなどの握りをいただきました。ひととおり食べた後、「もう一貫食べたい!」と注文が一番多いのがこちらの赤身。酒やみりんを混ぜた醤油に漬けたマグロを口に運ぶと、ねっとりとした食感と柚子の香りが広がる至福の一貫です。握りだけでなく、小鉢と刺身にも和食を極めた中村さんの手間隙が込められており、初めて訪問する方はやはりこのコース料理を楽しんでいただきたいと思います。
また、ぜひ飲んでみてほしいのが、宮城・新澤酒造とともに作り上げた純米吟醸「52」です。元プロサッカー選手の中田英寿さんの協力のもと実現したコラボレーションだそうで、精米歩合52%、もちろん52階ともかけたアンダーズオリジナルの日本酒。陶磁器作家、新里明士さんなど、芸術作品のように美しいお猪口のコレクションも楽しみのひとつです。
そして最後のデザートは、「the SUSHI」のすぐ裏にある「ルーフトップ バー」へ移動していただくのが乙な楽しみ方!同行の方も必ず喜ぶ、素敵なサプライズです。初夏の風が抜けるセミオープンのテラスは、満腹感も相まっていくらでも長居したくなる居心地のよさ。一流ミクソロジストが揃うバーで、この日はデザートに合わせて「パッションフルーツのウォッカギムレット」を作っていただきました。目の前には虎ノ門ヒルズより高い建物のない開放的な夜景。カクテルのおいしさもまた格別で、なんと酔いがまわるのが早いことか(笑)アンダーズ 東京の最上階で味わう、最上級の非日常。ちょっと特別な日に、こちらの「the SUSHI」とバーをぜひ体験してみてください!
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アンダーズ 東京
KEIICHI IZAWA
トラベルエディター
旅行ガイドブック『地球の歩き方』編集部にて国内外のガイドブックを多数手がけ、2017年に独立。現在は、雑誌のホテル特集ページ制作を手がけたり、「ワーケーション」や「ステイケーション」をテーマに連載記事の執筆、また自らのInstagramアカウントで日々おすすめホテル情報を発信している。