リッター社「ピーラー」
取るに足らないものだけれど、あるとないとでは大違いの下ごしらえの強い味方。今月ご紹介するのはドイツ生まれのリッター社のピーラーです。
手にしっくりと収まる小ぶりのスチロール樹脂性でデザインはとてもシンプルでキッチンにあってもじゃまになりません。刃はカーボンスチールとステンレス製の2種類ありますが、私は切れ味のいいステンレス製の刃のものをチョイス。
軽くてとても使いやすく、これがキッチンで見当たらないと血眼になって捜してしまうほど。ひとつ700円ほどでコスパも抜群。まさにキッチンの必需品です。すぐに替えが利くようひとつかふたつ余分に買ってストックしています。きゅうりの皮を縞状にむく、じゃがいもの皮をむいて芽を取る、しりしりを作るためににんじんの皮をむく、今なら茄子の皮も!(ちなみに薄くむいた茄子の皮はきんぴらにするとオツな味に)。
とにかく.毎日なにかしらの皮をむいているのですが、この薄く皮がむけるという特性を生かせるのが冬瓜を煮るとき。今の時期から青果店やスーパーで見かけるようになる縞のないすいかのような深いグリーンのひとかかえもある細長い瓜が冬瓜です。
和食屋さんや高級中華料理で見かける夏野菜のひとつで、なかなか縁遠いと敬遠しがちかもしれませんが、実は自宅でも簡単に調理することができるんです。美味しいお出しをたっぷりと吸った翡翠色の冬瓜は夏のごちそう。でき立ての熱々でもひんやり冷やしてもとても美味しい。
冬瓜の美味しさのひとつは透明感のある翡翠色。皮をむいてからこぶりに切り分けてわたを取ってから直煮にするのですが、表面がつるつるとした冬瓜の皮を包丁でむくのはひと苦労。それに包丁で皮を切り落としてしまうと冬瓜の魅力である美しいグリーンの部分を切り落としてしまうことになってしまいます。
せっかくならきれいな緑に仕上げたいもの。ここでリッターのピーラーの出番です。ヘタの部分から表面を添わせるようにピーラーを滑らせると薄く緑の部分が透けるように残ってとてもいい塩梅。煮崩れないように面取りするのもこのピーラーを使えば簡単。
細かく隠し包丁を入れて直接だし汁で煮るだけで、透明感あふれる涼しげなグリーンに煮上がります。クセやアクがないのでどんな種類のスープにもしっくり馴染むのもうれしい。和風のだしでも鶏手羽は豚のスペアリブなどで取った中華風のスープでも美味しくなります。夏バテ気味になるこれからの季節、滋味あふれるスープとサクッと歯ごたえのいい冬瓜の組み合わせはぜひ、味わってみていただきたい一品です。
また皮をむくという作業の他にも面白い使い方が生野菜をリボン状にスライスすること。きゅうりやにんじん、ズッキーニなどの皮をむいてから縦に長く刃を滑らせて細長いリボン状に削ったものを水に放つとくるりとカールして可愛らしいルックスに。水気をしっかりと切ってからサラダにするもよし、冷しゃぶのあしらいにしても見栄えがします。
冬は甘味の増した大根をリボン状に削ってあさりや豚肉とお鍋にするのもおすすめ。ひらりと鍋のなかで泳いでいるうちに火が通って、旨みのあるスープを吸って美味しくなっています。
皮をむくだけでなく、ちょっとした工夫でますます便利に使えるリッターのピーラー。気を付けなければいけないのは樹脂と刃の部分に錆びが出てしまうことがあるので水気は禁物。洗ったらすぐに水分を取り除くようにして。そうすれば長く愛用することがきると思います。
冬瓜と海老の冷やし鉢
<材料>
冬瓜 900g
むき海老 150g
オクラ 4本
片栗粉 大さじ1
A
だし汁 3カップ
生姜(薄切り) 2枚
塩 小さじ1/2
薄口醤油 小さじ2
酒 大さじ2
みりん 大さじ3
<作り方>
1. 冬瓜は皮をピーラーで薄くむいて4㎝角に切りワタを取り除き、ピーラーで面取りし、皮側に斜めに細かく隠し包丁を入れる。薄い塩水に5分ほど浸し水けを切る。海老は塩水(分量外)でさっと洗って水けをふき、粗く刻む。
2. 鍋にAと冬瓜を入れて火にかけ、煮立ったらワックスペーパーなどを落としふたにして弱火にして15分煮る。火を止めそのまま冷ます。冷めたら冬瓜を取りだし冷蔵庫で冷やす。
3. 冬瓜を取りだした煮汁に片栗粉をまぶした海老を加え、中火にかける。海老の色が変わるまで混ぜながらふつふつを煮立つまで煮て、そのまま冷やす。
4. オクラは塩をまぶして(分量外)板ずりしてから熱湯でさっと茹でて冷水に取り、5ミリ幅の小口切りにし、冷やした3に加える。
5. うつわに冬瓜を盛りつけ、4のあんをかける。あれば青柚子をおろしてかける。
商品情報
ritter
ariko
エディター / ライター
「CLASSY.」「VERY」などファッション誌の表紙などを担当するエディター、ライター。インスタグラムに投稿するセンスあふれる料理写真や食いしん坊記録で話題に。Instagramのフォロワーは20万人越え。著書に「arikoの食卓」シリーズ(ワニブックス)、「arikoのパン」(主婦の友社)「ありこんだて」(光文社)「おいしいルーティン」(講談社)「arikoの家和食」(講談社)に続いて、7月7日にはお菓子の本「arikoの喫茶室」がマガジンハウスから発売中。